金子博

いままではほとんどの場合、レースで撮ってきた写真は出版社であるとか、スポンサーであるとかに使っていただき、それが生業になっていました。そこには編集者や代理店の担当者と作品を作り上げる楽しさがあったわけだけど、同時に「自分の思うような作品を作りたい」という欲求もあるわけです。完全にとは言わないまでも、ある程度は自分でコントロールできるメディアを持てないか……。長くやっていると時代は変るものです。デジタルコンテンツという、”自分でできるかもしれない”システムが、突然出てきたのです。それが今回リリースする、「つみき」です。僕は、来年の鈴鹿でグランプリ取材500戦を迎えます。事務所には、30年以上に渡って撮影してきた膨大な写真があり、その中には世の中に出ていない写真もたくさんあります。いままで僕がグランプリの現場で積み上げてきたものや、これからも積み上げていくであろうものを、みなさんに見ていただきたい……そんな想いを「つみき」というタイトルに込めました。みなさんに見ていただき、みなさんそれぞれが積み上げてきたF1の記憶と僕の写真がオーバーラップしたら……幸いです。 Hiroshi Kaneko 53年10月17日、東京生まれ。74年東京写真専門学校卒業。76年からフリーランスとして自動車およびレースを中心に活動開始。76年F1日本GPをきっかけにフィールドをF1に絞る。2011年鈴鹿でGP取材500回に届くスペシャリストとして活動中。日本レース写真家協会(JRPA)会員Formula One Photographers Association 会員 Media : スポーツグラフィックNumber(文藝春秋)、F1速報(イデア)、モーターマガジン(モーターマガジン社)など。写真集 : 「RACINGDAYS」「RACINGDAYS FINAL」(自費出版)、「最速」(剄文社)、「夢あるところに」(ソニーマガジンズ)など。

小林直樹

F1やINDYなどに比べると、日本でWRCのことを知っている人は少ないんじゃないでしょうか。メディアも多いとは言えないし、その結果、魅力を伝えきれていないところがたくさんあります。自然をフィールドにするWRCは、クローズド・サーキットを舞台とするモータースポーツに比べ、わかりにくいスポーツです。毎年、毎レースで写真を撮っている僕でさえ、必ず2日間はロケハンを行うほどですから。なぜかというと、たとえ毎年同じコースでレースが行われたとしても、季節や時間帯の違いによってガラリと状況が変ってしまうのです。だから僕らプロでも毎回ロケハンを行い、撮影ポイントを探さなければなりません。実はここにWRC観戦の醍醐味の一つがあります。つまりお客さんも、”どこで見ればいいか”とロケハンをしながら、レースを楽しむことになるのです。自然を舞台にするWRCならではの魅力です。とはいえ、いきなりレースの現場に出かけるのはハードルが高いかもしれません。そんなみなさんに、WRCとは、どんなコースで、どんなドライバーが、どんなマシンを使ってコンペティションを行っているかを知っていただこうと、「The Roads of the World」をスタートさせます。凍てつく氷の道から灼熱の砂道、美しい緑に囲まれた道から中世の街並みを駆け抜ける道まで。世界中を駆け巡るWRCの魅力に、触れていただければと思います。 Naoki Kobayashi 65年千葉県生まれ。サラリーマン時代の27歳の頃から、モータースポーツ撮影を始める。94年マカオGPをきっかけに脱サラをし、フリーランスとして活動開始。98年からWRCを全戦追いかける生活が始まり、現在に至る。日本レース写真家協会(JRPA)会員 Media : ラリー専門誌「WRC PLUS」、WRC PLUS(イデア)など。